上手な薬の飲ませ方 【平成21年(2009年)12月23日産経新聞より】
先日、中耳炎の息子を連れて薬局を訪れたところ、4、5歳ぐらいの男の子のお母さんが「うちの子は薬を飲むと吐き出してしまう。こんなにたくさん飲めない」と訴えていた。確かに子供に薬を飲ませるのは大変だ。何か良い方法はないだろうか。
(岸本佳)
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おすすめはジャム
「小児科の患者さんの薬を調剤していると、必ず『飲まない』という問題に突き当たります」
こう話すのは、三重県亀山市の「すずらん調剤薬局」の管理薬剤師、上荷裕広さん。製薬会社のMR(医薬情報担当者)を経て14年前に薬局を開いた。学会などで子供への上手な薬の飲ませ方も研究しており、コツを教えてもらった。
まず上荷さんは、薬を飲ませるうえで大切なこととして、
・服用回数を守る
・乳児の場合、ミルクや離乳食に混ぜない
・飲めたらほめる―の3つを挙げる。
1歳未満の乳児にシロップ薬を飲ませる場合は、スポイトなどを使って口の中に入れる。粉薬は少量ならそのまま指につけ、量が多ければ少し水を混ぜてペースト状にし、子供のほおの内側などに塗り、飲み物を与える。
もう少し年齢の高い子供なら水薬はパンやカステラに浸すのも可能。粉薬はそのまま飲ませるが吸い込んでむせたりしないように、「あー」と声を出しながら口に入れさせる。
それでも嫌がるなら、アイスクリームなどに混ぜるという手も。
上荷さんのおすすめはジャムやコンデンスミルク。「小児用の薬はイチゴ味が多いのでジャムと相性が良い。ジャムと混ぜても薬が溶け出さないので苦みが出てくることもない」
チョコレート味は、カカオの苦みに薬の苦味が混ざる。インフルエンザで処方される「タミフルドライシロップ」もチョコアイスなどに混ぜると飲みやすい。
甘みが苦手な子供には、のりのつくだ煮やふりかけと混ぜる手もある。ただし、薬によっては合わせる食品によって、逆に苦くなる場合もあるので、必ず薬剤師に相談を。
方法は十人十色
ただ、こういった方法はあくまで「服薬の動機を高めるため」。子供によっては「なぜ薬を飲まなくてはならないのかを説明する」という正攻法が通じることもある。幼稚園で友達が薬を飲んでほめられる場面に遭遇し、急に粉薬を飲めるようになった子供もいる。
「子供が薬を飲まないと、うちの子だけが飲めないと思って悩み、焦るお母さんも多い。そんなときはぜひ薬剤師に相談してほしい。10人いれば10人、方法は違う。どれがうまくいくか分からないが、じっくりとやってみましょう」と上荷さんはアドバイスする。
シールや塗り絵も動機づけに
薬を飲ませる動機付けには、子供が大好きなシールや塗り絵が一役買うこともある。薬を飲むたびにシールを張らせたり、塗り絵をプ レゼントしてみよう。また、1人で飲ませるのではなく、家族が一緒に飲んでいるふりをすることで効果が出るケースもある。その場合、家族は乳糖など薬以外のものを。